新型コロナウィルスの感染者数拡大や緊急事態宣言の発出等を受け、東京地方裁判所における自己破産申立の即日面接の方法が変わりました。当分の間は電話面接が原則となり、これに伴っていくつかの運用が変更となっています。
ここでは、令和2年8月31日から始まったコロナ渦の東京地方裁判所における自己破産の運用上の注意点について詳しく解説します。
東京地方裁判所では、自己破産の申立てがなされると、その申立受付日の当日またはその翌日から3日の間に裁判官と面接を行うという運用がなされていました。これを 即日面接 といいます。
即日面接が実施されるのは、平日の午前9時15分から11時30分の間と午後1時から2時の間でした。
即日面接において、裁判官は、提出された申立書一式に基づいて、借り入れの原因、受任通知発送後の返済等がないか、債権者の属性、申立人の職業、家族構成など様々な質問をしてきます。
即日面接は、裁判官が、申立てられた自己破産案件を 同時廃止手続 に回すか、それとも 少額管財手続 に回すかを判断するための重要な手続として機能してきました。
即日面接についての詳しい解説は、こちら をご覧下さい。
コロナ渦における自己破産申立に関して、令和2年8月31日以降の運用上の主な注意点は、①即日面接の電話面接の原則化、②郵送申立に対応した注意喚起、③保管金提出方法の変更です。
この運用は、新型コロナウィルスの感染者数拡大等の状況を踏まえた暫定的な措置であり、状況に応じて随時変更される可能性があるとされています(令和2年8月31日発行・東京地方裁判所民事第20部即日面接係 即日面接通信vol.26より)。
以下、それぞれの変更点について詳しく解説します。
即日面接は、電話によることが原則となりました。
自己破産の申立日(郵送申立ての場合は裁判所からの連絡日)及びその翌日から3営業日以内の面接時間帯に、即日面接係に電話し、電話面接希望の旨、事件番号及び債務者名を伝えて、即日面接を開始します。
面接時間帯は、これまでの即日面接と同じ、平日の午前9時15分から11時30分の間と午後1時から2時の間です。
なお、電話面接において裁判官から質問される事項や、同時廃止と少額管財事件の振分けの基準などは、従前の即日面接と同じです。ただし、これまでの即日面接と異なり、混雑状況等によっては、電話面接日の当日中に開始決定がなされない可能性があります。
自己破産申立案件には急を要する案件も少なくありません。例えば、給与の差押えが迫っていたり、債権者からの厳しい取り立てがなされていたりする案件などです。
このように申立代理人が、直ちに面接を必要とする案件であると判断した場合、そのことを裁判所に伝えて即日面接を受けることができます。
この場合の即日面接は、コロナ渦以前の即日面接と変わりはありません。開始決定も、即日面接日の当日中に出されることになります。
以前から郵送による自己破産申立は実施されていましたが、即日面接が原則として電話面接となったことにより、破産申立書を持参するメリットが薄れ、今後はさらに郵送による自己破産の申立てが増加することが見込まれます。そこで、東京地方裁判所民事第20部からは、郵送申立に関していくつかの注意喚起がされています。
ア 面接日時
郵送で自己破産の申立てをした場合、申立書類一式が裁判所に受理され、裁判所から電話連絡があった日及びその翌日から3日以内が、電話による面接が可能な日時となります。
イ 官報費用納付用紙の郵送
これまでは、即日面接時に裁判所で官報費用納付用紙を受け取っていましたが、郵送による自己破産申立の場合、官報費用納付用紙は申立代理人宛てに郵送されてくることになります。
ウ 債権者宛封筒の同封
自己破産の申立てをすると、裁判所から債権者に対し、「〇〇さんから破産の申立てがなされました。〇〇さんに対して債権がある場合には債権届をして下さい。」という内容の通知が送られます。この通知を送るための封筒(債権者宛封筒)は、これまでは即日面接時に裁判所に提出していましたが、郵送による自己破産申立の場合、申立書類一式と併せて、債権者宛封筒を送ることとされています。
なお、債権者宛封筒は、所定の封筒を利用しなければなりません。これは、東京地方裁判所民事第20部の受付窓口でもらうことができます。
自己破産の申立てをする場合、官報公告費用(官報に破産申立の事実を掲載してもらうための費用)を予め納付しなければなりません。
これまでは、即日面接後に、そのまま裁判所で官報公告費用を現金で納付する方法が一般的でした。
コロナ渦以降は、東京地方裁判所民事第20部での現金納付は行われておらず、口座振込等によって行うことになっています。なお、官報公告費用の予納期限は、原則として「破産手続開始の決定(同時廃止事件では面接日の午後5時、管財事件では面接日の翌週水曜日午後5時)まで」とされています。
ここまで解説してきましたように、令和2年初頭からの新型コロナウィルスの感染者数拡大以前と後とでは、自己破産申立に関する裁判所の運用も大きく変更されています。そのため、迅速かつスムーズな自己破産申立のためには、手続を熟知した専門の弁護士に相談するのがベストといえるでしょう。
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