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裁判を起こされた後でも任意整理はできますか?

任意整理 は、債権者と債務者との間で債務の支払について合意することでできます。
裁判という措置を採るということは、債権者は「任意」に債務整理をするつもりはなく、裁判を起こされた以上任意整理はできなくなると思われるかもしれません。しかし、そうとも限りません。ここでは、裁判と任意整理の関係について詳しく解説します。

任意整理とは何か

任意整理 とは、貸金業者と個別に交渉を行い、債務額を減らしたり、利息のカットや分割回数の変更によって月々の返済額を減らしたりして、スムーズな完済を目指していく手続です。

弁護士があなたの代わりに貸金業者と交渉を行い、現在の返済条件よりも有利な条件での和解契約締結を目指していきます。任意整理は、自己破産や個人再生と異なり、裁判所を通さず、各債権者との間で交渉を行っていくものです。

裁判等を起こされるとどうなるの

裁判等の種類

借金の回収に関するための裁判を通じた手続(ここでは「裁判等」ということにします。)は、大きく分けて 訴訟民事調停 というものがあります。

いずれも債権者が、債務者に対して借金を支払うことを求める手続で、裁判所に申し立てるものですが、 民事調停 は、裁判所を交えて話し合いをするための手続です。これに対して、 訴訟 は、基本的には裁判所に対して債務者に支払を命ずる判決を求める手続で、判決後も任意の返済がなされなければ強制的に債権を回収することを目的とするものです。

訴訟 は、民事調停よりも対立関係が浮き彫りになる手続ということができるでしょう。

債権者としては、裁判を起こすまでに督促状などを送って支払いを求めて来るのが一般的であり、それでも支払いがないからこそ裁判等を起こすのですから、民事調停を申立てて話合いをするよりも訴訟を提起して支払を求めることの方が多いといえます。

裁判等を起こされたら

【民事調停の手続】
民事調停を申し立てられると、裁判所から呼出状と申立人が裁判所に提出した申立書及び資料が送られてきます。呼出状には、裁判所に出頭する日時(平日の午前10時から午後5時で、土日や夜間はやっていません。)と債権者の言い分に対する債務者の見解を記載した回答書を期限までに提出するよう書かれています。

申立書には、債権者が債務者に対して求める内容やその理由が書かれています。資料は、理由部分を裏付けするものとして添付されていることがあります。

これらの書面を受け取ったら、申立書を良く読んで、回答書を作成して期限までに裁判所に提出することになります。回答書の提出期限は、裁判所に出頭する日の1~2週間前程度であることが多いです。回答書を提出した後、指定された日時に裁判所に行くことになります。

【訴訟の手続】
訴訟を提起されると、裁判所から呼出状と原告が裁判所に提出した訴状及び証拠が送られてきます。呼出状には、裁判所に出頭する日時(平日の午前10時から午後5時まで、土日や夜間はやっていません。)と原告(債権者)の言い分に対する被告(債務者)の見解を記載した答弁書を期限までに提出するように書かれています。

訴状には、原告が求める判決の内容や、その判決を求める理由が記載されています。証拠は、その理由を裏付けるものとして提出されます。

訴えられた方(被告と呼ばれます。)は、訴状を良く読んで、原告の言っていることを認めるかどうかや自分の言い分を記載した答弁書を作成して期限までに裁判所に提出することになります。答弁書で書いたことについてもそれを裏付ける証拠が必要となりますので、必要に応じて証拠を出すことになります。答弁書の提出期限は、裁判所に出頭する日の1~2週間前程度であることが多いです。答弁書提出の後、呼出状で指定された日時に裁判所に行くことになります。

その後の裁判手続は、当時者が裁判所に出した訴状・申立書や答弁書・回答書、証拠・資料を元に進められていくことになります。

裁判等と任意整理の関係

裁判等を起こされた後に任意整理はできるのか

裁判等を起こされても、裁判外において当事者同士で話し合いをすることが禁止されるわけではありませんので、任意整理は可能です。ただし、裁判等を起こされた場合、裁判等を起こされる前と同じ条件で任意整理をするのは難しくなってしまいます。この点について解説していきます。

債権者は、裁判等を起こすまで催告書を何回も送ったり、督促状を送ったり、内容証明郵便を送ったり、弁護士費用を支払ったりしています。金融業者としては、貸したお金が返ってこなければ損することになりますし、債権回収にかけた費用(上記の費用や人件費など)も回収できなければ損をすることになります。これでは、会社としてはやっていけません。そうなると、債権者としてはその債務者から回収しなければならない金額が高くなります。もし全額回収ができないとしても、少しでも損害を小さくしたいと考えるでしょう。

このことを債務者側からみると、任意整理をするための条件が厳しくなるということになります。つまり、債務者としては利息のカット等の交渉をしたいが、債権者としては多額の費用がかかっているので、そこまで減額した任意整理には応じられないとか、これまで滞納期間が長くなっているのにさらに長期間かけて返済するという合意はできないという状況になってくるわけです。

このような話をされると、裁判を起こされたら任意整理に応じる可能性はほとんどないではないかと思われるかもしれません。

しかし、債権者が勝訴判決を得たところで、債務者が、支払をする見通しが立たず破産することとなってしまったら一銭も支払ってもらえない可能性があります。債権者は、そうなってしまうくらいならば、元本だけでも返してもらいたいと考えるでしょう。このような場合に、債権者側にも任意整理に応じるメリットが出てきます。

この点については、トピック≪なぜ債権者は任意整理に応じてくれるのか≫ で詳しく解説していますので、そちらをご覧下さい。

このように、裁判を起こされた後は、任意整理の条件が厳しくなることが考えられますが、その余地が全くないわけではありません。

任意整理ができたら裁判等はどうなるか

訴訟を提起された後の任意整理の方法として、裁判上の和解裁判外の和解 があります。

裁判上の和解 は、裁判所が行う手続の中で、裁判所を交えて債権者と債務者が支払について合意をするものです。この合意によって、訴訟は終了します。もしその後、この和解のとおりに支払がなかった場合、債権者は、この和解を根拠に債務者の給料や財産を差し押さえるなどの執行手続をとることができます。

裁判外の和解 は、裁判所を交えないで当事者同士で交渉して支払について合意するものです。こちらは、裁判上の和解と異なり、支払がなかったとしても、直ちに差押えなどの強制執行はできません。債権者は改めて和解内容どおりの支払を求めて裁判を起こすことになります。そこで債務者が敗訴した場合には、財産の差押えをされる可能性が出てきます。

裁判外の和解は裁判上の手続ではないため、裁判外の和解が成立したからといって当然に裁判は終了にはなりません。ですので、原告(債権者)に、訴えの取下げ をしてもらうことになります。この訴えの取り下げがなされて初めて訴訟が終了となります。

民事調停を申し立てられた段階での任意整理としては、当該調停手続での合意と裁判外の和解があります。

民事調停手続での合意は、訴訟における裁判上の和解とほぼ同じです。民事調停が成立すれば、それによって手続は終了します。その後、合意内容に従った支払がなされなければ、当該調停での合意を根拠に債務者の財産の差押えがなされることになります。

裁判外の和解をした場合、それによって民事調停が当然に終了するものではないので、訴訟のときと同様に債権者に民事調停の申立てを取り下げてもらう必要があります。

任意整理ができなかったら裁判等はどうなるか

任意整理ができなかった場合(裁判上の和解、裁判外の和解、民事調停での合意ができなかった場合)、裁判手続が進められることになります。

民事調停であれば、裁判所が当該調停手続を打ち切ることでその手続が終了します。その後債権者は訴訟を提起することが考えられます。

訴えが提起されている場合は、判決に向かって手続が進められていきます。判決で敗訴した場合には、その後執行手続が採られることになります。執行手続とは、債務者の財産から強制的に債権の回収をする制度です。預金口座の差押えや給料の差押え、不動産があれば不動産の差押えなどがなされることになります。

任意整理をするタイミング

これまで任意整理は、裁判等を起こされてもできるけれども裁判等を起こされた後は、和解の条件が厳しくなることについて解説してきました。このことから、任意整理をするのであれば、裁判等を起こされる前が望ましいということができます。

もっとも、裁判等を起こされた後であっても、呼出状に記載されている、最初に裁判所に出頭する日時(これを第1回口頭弁論期日といいます。)より前であれば、原告やその代理人が裁判所に出頭するという手間がかかっていません。他方で、第1回口頭弁論期日を超えてしまうと、期日のための準備や出頭などの手間がかかってしまいますし、裁判手続も判決に向かって進められていきます。判決ともなれば、債権者は、執行手続によって強制的に債権を回収することができるので、任意整理に応じる必要性はますます小さくなってしまいます。

このことから、第1回口頭弁論期日の前と比べて、第1回口頭弁論期日の後は、さらに任意整理の交渉が難しくなります。

以上のことから、任意整理について相談をするタイミングとしては、裁判を起こされる前の方が良く、裁判を起こされた後であったとしても、せめて 第1回口頭弁論期日の前に任意整理を成立させられるよう、余裕をもって弁護士に相談する必要があるでしょう。

まとめ

ここまで解説してきたとおり、裁判等を起こされた後も任意整理は可能ですが、第1回口頭弁論期日を越えてしまうと任意整理の条件がかなり厳しくなる可能性があります。

債務整理を受任するとなった場合には、事実関係の調査や手続をしなければならず、裁判等に対応するためには、準備が必要となりますので、裁判期日の直前ではなく、裁判所から書類が届いた時点ですぐに弁護士に相談をすることが重要です。

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