会社をたたむ、会社破産のベストなタイミングとは、どのような時点でしょうか。
それは、債務超過に陥った以降で、かつ取引先や従業員などへの影響がなるべく小さい時点ということになります。これは、通常、債務超過に陥ってから時間が経過すれば経過するほど、当面の資金繰りに困窮するようになり、大切な取引先への買掛金の支払や従業員への給与の支払いすらできなくなってくるからです。
さらに、会社破産には最低100万円前後の手続費用がかかるため、この費用を用意できるうちに決断する必要があります。
具体的な検討項目として、以下の項目のうち、いくつかに該当するようになった場合には、会社をやめるべきか真剣に検討する必要があるでしょう。
こうした場合でも、支払ができない状態や赤字が一時的なものであれば、まだ会社を立て直すことができる可能性があります。しかし、慢性的にこのような状況であるならば、会社破産という選択を真剣に考えなければなりません。
将来的に見ても返済が不可能になっているにも関わらず、会社破産のタイミングが遅れてしまうと、取引先や従業員など多くの人に迷惑をかけてしまいます。
破産申立の準備をするにしても、ある程度の時間はかかってしまいますから、できる限り先手を打って行動することが重要です。
では、なぜ早い時期に手続を進めた方が良いのでしょうか。
破産手続を行うにも裁判所への申立費用や弁護士費用がかかります。
当事務所の費用の詳細は こちら
会社にまだ少しでもキャッシュが残っていれば、これを破産申立の費用に充てることができます。しかし、会社の資金が底を突くまで営業を続けてしまうと、破産申立費用を捻出できないことから、直ちに破産を申し立てることができません。また、代表者個人のポケットマネーから捻出せざるを得ないということにもなるでしょう。
したがって、まだ会社に少しでもキャッシュが残っている時点で破産手続の準備を開始する必要があります。
東京地方裁判所における法人破産の少額管財事件の裁判費用・予納金は下記の通りとなります。
※令和2年5月現在
申立手数料(収入印紙代) | 1,000円 |
予納郵券 | 4,200円 (内訳:210円×8枚、84円×29枚、10円×6枚、2円×10枚、1円×4枚) |
官報公告費 | 14,786円 |
引継予納金 | 最低200,000円 |
①申立手数料・予納郵券
破産申立をする際には、申立手数料として、1,000円の収入印紙を申立書に貼付する必要があります。また、裁判所からの連絡用の郵便切手(予納郵券)として4,200円分も提出します。
②予納金
予納金とは、官報公告費用や破産管財人の報酬に充てるために裁判所にあらかじめ納付するお金のことです。東京地方裁判所では、官報公告費用が14,786円になります。また、管財人の報酬に充てる引継予納金は、少額管財事件の場合、最低20万円です。
債務超過や支払不能に陥いると、通常は赤字がどんどん膨らんでいきます。確実な入金のめどが立っているのであれば良いのですが、この先も支払いの目途が立たないような場合、債権者からの取り立ても激しくなりますし、従業員の不安も増してゆき、経営者も精神的にも追い込まれていってしまいます。近い将来黒字に転換できる可能性がないのであれば、少しでも傷が浅いうちに決断することが必要でしょう。
会社破産の場合、最終的には従業員も全員解雇することになります。このとき、会社にまだキャッシュが残っているうちに破産を選択することを決断できれば、従業員に対して解雇予告手当や退職金まで支払ってあげることができます。
しかし、破産の決断を先延ばしにして、ほとんどキャッシュがない状態で破産を決意した場合、退職金はおろか、当月分の給与されも支払えず、これまで会社のために尽くしてきてくれた従業員やその家族の生活を脅かすことにもなってしまいます。
会社破産をする場合、連鎖倒産が起きることも珍しくありません。
なるべくキャッシュが残っているうちに、取引先に廃業の連絡を行い、取引を中止して、取引先の債権額を増やさないような配慮も必要です。
支払いのあてもないまま、資材を購入するなどして買掛金を増やしてしまい、そのまま倒産、ということになってしまいますと、取引先の売掛債権は焦げ付き、破産を余儀なくされる場合もあるでしょう。
なお、取引先の売掛債権については、売掛先が破産することによるメリットもないわけではありません。売掛先が破産した場合、債権回収が不可能であることが明確になるため、税務上、売掛金を貸倒損失として計上できるようになるからです。
会社の事務所を賃貸している場合、賃貸借契約を解約した上で破産申立をすることもできますし、解約しないうちに破産申立をすることもできます。
なお、破産申立を決断した時点で、賃料の支払いも難しくなっていることが多いため、賃貸人の側から賃貸借契約を解除され、明渡しを求められるケースも少なくありません。
賃貸借契約が継続した状態で破産申立をした場合、破産管財人は、通常、賃貸借契約を解除して、テナントを賃貸人に返還します。この場合,破産手続開始前に発生していた賃料請求権は破産債権となり、他の借金などと同じように扱われることになります。破産手続開始から契約解除までの間に発生した賃料請求権は財団債権となり、配当を待たずに破産財団から随時支払いを行うことができます。
他方、破産管財人は、賃料を支払って賃貸人に対して目的物を使用・収益させるよう請求することもできます。この場合の賃料請求権も、もちろん財団債権となります。
破産手続を進める上では、破産を申立てる旨を関係者に公表するタイミングが重要になってきます。
関係者というのは、取引先、借入先の金融機関、従業員などです。
信用不安の噂は瞬く間に広がりますので、どの順番でどのタイミングで告知するかという点が重要です。
取引先との関係では、告知によって、取り立ての激化、売掛金や在庫への質権設定といったリスクが高まります。
また、消費税や社会保険料など公租公課の滞納がある場合、税務当局から、預金、売掛金、敷金などの資産を差し押さえられるリスクがあります。
さらに、従業員に知らせることで、こちら側が想定していた解散日を待たずして従業員が辞めてしまう、その結果予定していた最後の売掛金の回収ができなくなる、といったリスクも出てきます。
会社破産は順序やタイミングが重要です。当事務所では、会社の実情に応じたご助言を行い、スムーズな会社破産のお手伝いをさせていただいております。資金繰りが難しくなったと感じましたら、お早めに当事務所に相談いただければ幸いです。
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