弁護士が消費者金融などの債権者と個別に交渉を行い、月々の返済金額を減らし、利息のカットも目指していく任意整理。ここではそのメリットとデメリットを解説します。
任意整理の依頼を受けると、弁護士はまず債権者に対して受任通知書を発送します。
受任通知書とは、弁護士が依頼者から債務整理の依頼を受け、受任したことを債権者に通知する書面のことです。
消費者金融や銀行などの貸金業者は、受任通知書を受け取った後は、債務者に対して直接取り立ての連絡をすることが法律上禁止されます(貸金業法第21条1項9号)。
そのため、弁護士に任意整理の依頼をすることで、債権者からの催促が止まるというメリットがあります。
受任通知についての詳しい説明は こちら
日本には、借金の利息や遅延損害金の利率を制限するために、利息制限法という法律があります。
利息制限法が定める利息の上限は次のとおりです。
現在ではほとんど見られませんが、かつては、利息制限法を超える金利で貸し出しをする消費者金融が多数ありました。そのため、何十年も前から借入れの取引があるような場合、現在は利息制限法に反しない利息になっていても、過去は利息制限法を超える利率の貸し出しがされており、それに基づいて返済を行っていた、というケースがあります。そのような場合、利息制限法に引き直して計算をした結果、現時点での債務額が大きく減少したり、場合によってはむしろ多く返しすぎていて、返しすぎた分の返還を求めることができる場合もあります。これが、過払い金返還請求というものです。
弁護士に任意整理を依頼することで、利息制限法に則った現在の正しい債務額が判明するというのも大きなメリットの一つといえるでしょう。
自己破産や個人再生の場合、債権者を平等に扱うという点が重要になります。そのため、自己破産や個人再生では、一部の債権者を除いて手続を行うことはできません。ここで、債権者とは、金融機関だけでなく、友人や知人からの借金も含まれます。
また、ある借金については友人が連帯保証人になっている、という場合、自己破産や個人再生の手続を行うと、債権者は連帯保証人に借金返済の請求をするようになります。
このような場合、ほとんどすべての借金については債務整理をして、利息をカットするなどして返済額を減らしたいが、特定の一部の借金だけは債務整理せずに、これまでどおり支払っていきたいというケースもあるでしょう。
そのような場合、任意整理であれば、任意整理をしたい債権者とだけ任意整理をし、それ以外の債権には一切手を付けないということも可能です。
任意整理では、住宅や車と行った財産を処分する必要は全くありません。
弁護士が債権者と個別に交渉をして月々の返済額を圧縮した和解を成立させますので、依頼者の方は、財産をそのまま手元に残したまま、給与などの収入を元手に、和解契約に基づいた月々の返済を行っていけば良いのです。
弁護士が間に入って金融機関等と交渉をした場合、ほとんど全てのケースにおいて、将来利息のカットに応じさせることが可能です。
利息のカットは、最終的な返済金額を大きく減らしてくれる、非常に重要な和解条件です。
例えば、年利14%で100万円を借りていて、毎月3万円ずつ返済していたとします。
この場合、任意整理をした場合としなかった場合の返済額は以下のようになります。
任意整理しない場合
返済総額 127万3550円
任意整理した場合
返済総額 100万円
このように、任意整理をしなかった場合、3年7か月かけて、総額127万3550円を返済しなければならないのに対し、任意整理をした場合には、返済総額は100万円となり、2年10か月で完済できることになります。
任意整理は、裁判所を介さない手続です。そのため、収入や資産を証明する客観的な資料を準備したり、全ての預貯金通帳のコピーを提出するといった手続も不要です。
任意整理を依頼したクライアント様としては、弁護士に対し、勤務状況や給与の手取り額、月々の生活費といった最低限の情報をいただくだけで、多くの場合には和解が成立し、月々の返済額を減らすことができます。
任意整理は、自己破産と違って、裁判所を通した手続ではないため、職業上の資格制限といったデメリットがありません。これまでのお仕事をそのまま続けながら、完済を目指していくことができます。
任意整理によって、月々の返済額の減額や利息のカットが期待できますが、原則として、元本そのものは減りません(利息制限法を超える利息を支払っていた場合を除く。)。
自己破産や個人再生の場合、元本自体が消滅したり、大幅に圧縮されるので、この点では自己破産や個人再生ほどのメリットがないことになります。
自己破産や個人再生だけでなく、任意整理を行った場合でも、その情報は信用情報機関(CIC、JICC、全銀協)に登録されます。情報が信用情報機関に登録されている間は、原則として新たな借入れやローンを組むことができません。もっとも、自己破産や個人再生の場合、登録される期間が7~10年とされているのに対し、任意整理の場合、登録期間は一般的に約5年となっており、自己破産や個人再生よりも短くなっています。
もっとも、金融機関としては、和解をしても完済してもらえる見込みがないのであれば和解をする意味がありません。そのため、クライアント様が当面収入を得られる見込みがないような場合や、相当長期間に渡って滞納をしてしまっていて、金融機関からの信用を完全に失ってしまっているような場合には、債権者が和解に応じない場合もあります。
したがって、金融機関から和解を拒絶されることのないよう、和解交渉をするに先立って、生活再建の見込みや完済の見込みについて、しっかりと金融機関に説明できるような準備が必要となります。
このように、任意整理は、月々の返済額を減らし利息もカットすることで完済を目指しやすくなる、家や車と行った財産を手放す必要がない、一部の債権者を選んで手続を行うことができるといった点において、非常に有用な手続ですが、同時にデメリットもございます。
イデア・パートナーズ法律事務所では、クライアント様の個々の状況を十分把握した上で、クライアント様にとって最も適した債務整理手続をご案内させていただいております。
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