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会社を廃業するときには、解散・清算といった手続が必要になります。以下では、会社を廃業するために必要な手続きについてご説明いたします。
会社破産(法人破産)とは、その名のとおり、「会社(法人)」が「破産」することです。
法人とは、法律によって人格が認められた存在のことです。例えば、株式会社や有限会社、合同会社などの「会社」や財団法人、社団法人、NPO法人、医療法人、弁護士法人、司法書士法人などの各種の「法人」があります。「法人」には「会社」が含まれますが、会社=法人ではなく、会社ではない法人(社団法人など)も存在します。法人は会社より広い概念です。
破産とは、負債と資産を清算する手続きです。債務超過や支払不能となって負債を全て支払うことができない状態になったときに、手持ちの資産によって負債を可能な限り支払い、残りの負債については消滅させる手続を行います。これが「破産」です。
個人の場合には破産手続の中で免責手続が行われます。「破産したら借金が免除される」と思われていることがありますが、免除されるのは「免責」の効果であって破産の効果ではありません。会社の場合、個人のような「免責」という考え方はなく、免責手続もありません。破産によって法人格は消滅し、法人に帰属していた債務も消滅します。
会社を経営してきた社長にとって、会社(法人)を破産させてしまうことは、手塩にかけてきた我が子を失うようなものであり、その喪失感は果てしなく大きいものでしょう。また、従業員(社員)に対する責任を感じる方も少なくありません。しかし、将来的にも返済が不可能な負債を抱えたまま、さらに負債を膨らませるよりも、債務超過及びその改善がほぼ不可能であると判断した段階で、会社破産(法人破産)を行うことは、社長として債権者への責任でもあり、また新たな「再出発」のためにも必要なことです。
いざ会社を破産しようとしたとき、「どういった手続きをどういう順番でとる必要があるのか」、「債権者から厳しい叱責を受けるのではないか、破産手続の流れに不安がある」、「代表者(社長)はどのような責任を負うのか」といった不安、疑問がある方も多いかと思います。以下では、会社破産(法人破産)の手続きの流れと、会社代表者(社長)がすべき準備について、解説します。
まずは、下記が法人破産の大まかな流れを図面化したものとなります。
破産の申立てを行う際には様々な準備が必要になります。以下、弁護士あるいは弁護士と共同して行う準備作業についてご説明します。
① 受任通知の送付
破産の申立てを弁護士に依頼すると、弁護士は、「弁護士が会社を代理して今後債務整理を進めていくこと」を連絡する書面を、債権者全員に対して送ります。これを「受任通知」といいます。
債権者に受任通知が届いた後は、弁護士が、債権の取立てや請求の窓口となります。そのため受任通知の送付後は、通常、会社は債権者からの直接の取り立てや請求を受けなくなります。「受任通知」には、「受任を知らせる」だけでなく、「債権の取り立てをストップする」という効果もあるのです。
受任通知によって、毎月の返済に充てていた金額の流出を止めることができます。手元に残ったキャッシュを破産申立費用や予納金など、手続に必要な費用に充てることができます。
② 提出資料の収集
会社破産の依頼を受けた弁護士は、裁判所に対して提出する「申立書」「財産目録」等の書類を作成し始めます。書類作成に先立って、会社(法人)の代表者におかれましては、弁護士に対し、破産に至ってしまった事情などについてお話いただき、会社の財産や契約関係についての資料をお渡しいただくことになります。
③ 債権者の調査(債権者一覧表の作成)
会社破産の依頼を受けた弁護士は、「債権者一覧表」を作成し、裁判所に提出します。破産手続では、債権者を債権額に応じて平等に扱う、という債権者平等原則が非常に重視されます。「債権者一覧表」に漏れがあると、一部の債権者が配当を受けられないことになってしまい、破産が許可されない事態に陥ってしまうリスクがあります。そこで、「債権者一覧表」は、慎重に作成する必要があります。「債権者一覧表」は、弁護士から送付した受任通知に対する債権者からの回答によって、適宜修正を加えます。
④ 会社の資産の現状
会社の資産(在庫、不動産、預金など)はすべて売却して債権者への配当に回すことになります。そこで、会社名義の資産をすべてリストアップしていきます。
⑤ 社員の解雇
会社(法人)が破産する場合、雇用している社員は順次解雇していくことになります。もっとも、会社の財務諸表等に精通した経理の方などについては、最後まで残しておいた方が、破産申立て及びその後の手続をスムーズに進められることも多いでしょう。
⑥ 賃貸借契約の解約
既に事業活動が停止している場合、少しでも会社から流出するキャッシュを小さくするために、テナントのオーナーに対し、事務所の賃貸借契約の解約申し入れをしましょう。
⑦ 代表者が連帯保証している債務の有無の確認
代表者が法人の債務を連帯保証している場合、会社が破産すると、代表者に請求が来ます。保証している金額が大きい場合、代表者個人としても破産が必要になることがあります。その他会社破産によるデメリットを入念に検討します。
破産手続においては、弁護士が会社の代理人として破産申立を行います。顧問弁護士がいるような場合でも、その弁護士が破産手続に精通していないような場合、会社破産については、これに精通した弁護士に依頼した方がスムーズに手続を進めることができるでしょう。破産申立てをするときには、「破産申立書」のほか、多くの必要書類を裁判所に提出する必要があり、弁護士は会社の代表者(社長など)にヒアリングをしながら書類作成を行います
申立書と必要書類、疎明資料が揃ったら、弁護士が裁判所へこれらを提出し、破産手続きの申立てをします。
弁護士が破産の申立てを行い、破産を開始すべき債務超過の状況にあることを裁判所が認めると、裁判所は2週間程度で破産手続開始決定を下します。破産手続開始決定がされないケースとして、破産手続開始申立棄却事由がある場合があげられます。例えば、手続費用の予納が困難なとき、不当な目的で破産申立をしたときなどです。
破産手続開始決定と同時に、裁判所は破産管財人という、破産する会社の財産を管理する弁護士を選任します。破産管財人が選任されると、財産の管理処分権は破産管財人に移り、会社自身であっても、自分の財産を管理・処分できなくなります。
破産の申立て後、約1週間以内に、破産管財人の事務所で、申立代理人弁護士、会社の代表者とともに三者面談をして、打ち合わせを行うことが通常です。
破産管財人は会社の財産を管理し、現金化できるものは売却して配当金に充てるためにこれをプールしていきます。会社の在庫や備品類、所有不動産などを順次売却し、金銭に変えていきます。破産会社の代表者も必要に応じてこの手続きに協力します。
破産手続開始決定の後、しばらくして、裁判所から債権者集会の期日を指定されます。債権者集会は、破産申立から約3か月後に設定されることが多いです。
債権者集会は、破産する会社(法人)の債権者と裁判所に対して、破産せざるをえなくなった事情、会社の資産状況などを説明する手続きです。
会社の代表者は、申立代理人の弁護士とともに、破産に至るまでの事情や会社の財産状況を整理し、債権者に説明する必要があります。もっとも、実際には破産管財人が調査結果を踏まえて債権者に対して説明をすることが多いでしょう。
売却すべき資産や、管財人による回収が必要な債権などがあまりない場合、債権者集会は1回で終わりますが、1回目で不十分とされた場合は2回以上開催されることもあります。特に、会社が売掛債権を残しており、管財人からの請求にも関わらず売掛先が売掛金を支払わないような場合、管財人は必要に応じて売掛先に対して訴訟を起こすなどして回収を図らなければならないため、破産手続は長期化することになります。このような場合には、月1回ほどのペースで、繰り返し債権者集会が開かれることも稀ではありません。なお、実際には、債権者が参加しないことも多く、その場合は、申立代理人の弁護士、裁判官、破産管財人、会社の代表者の4名で打ち合わせを行います。
「債権者への配当」とは、債権者と債権額を特定し、破産管財人が会社の財産(資産)をすべて換価した後に、債権者に対して会社の財産(資産)を分配する手続きです。
「配当」は、債権者に対して、破産開始決定時に会社に残っていた財産を「平等」に配当するのが原則です。平等というのは、債権額に応じて分配されるということです。
配当が終わると、破産手続は終了します。配当をする会社財産が存在しない場合、「異時廃止」の手続により、破産手続が終了します。
破産手続が終了すると、会社(法人)は消滅します。会社の消滅とともに会社が負っていた債務はすべて消滅します。
破産手続のときに必要な書類は、会社の状況や裁判所によっても異なりますが、主に下記のような書類が必要となります。
会社破産をするにもいくつかの条件が求められます。以下ではその条件についてご説明します。
個人の自己破産の場合は、「支払不能であること」が破産手続開始の条件ですが、法人破産の場合は「支払不能であること」だけでなく、「債務超過」であっても破産手続開始の条件が満たされます。
例えば、代表者がポケットマネーから資金を充当すれば会社が借入金を返済できる場合、直ちに「支払不能」とは言い切れません。しかし、代表者と法人を完全に切り分けて、会社が帳簿上赤字であれば、破産手続が開始できるように、「債務超過」がもう一つの条件として挙げられているのです。
当初から会社を倒産させる目的で経営していた場合(計画倒産など)がこれに当たります。
裁判所への手数料、官報掲載費、連絡用の切手代(予納郵券)等が支払えなければ、手続は開始されません。会社破産の場合、必ず破産管財人が選任されます。破産管財人の費用は最低20万円なので、これが支払えるよう、最低限の現預金が残っている状態で破産申立てを行う必要があります。なお、債権者の数が多い場合や債務額が多い場合、破産管財人の費用はさらに高額なる場合があります。
破産手続以外の債務整理のための手続が取られている場合には、そちらが優先されるため、破産手続は開始されません。
会社に全く無関係の人が破産申立てをすることはできません。 会社の場合、代表者が申立人となるのが一般的です。また、債務超過状態であるにも関わらず、代表者が一向に破産申立てをしないという場合、債権者が業を煮やして、破産の申立てをしてくることもあります。これを債権者破産といいます。
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